手の中の帰途 〈1〉
なんだか喉が渇く
ナブカが何を考えてるのか分からない。
あれから何度かナブカと行為に及んだが、いつも誘うのはこちらから。
それとなしに持ちかけると、いつもナブカは「疲れるから」等と突き放した言い方で拒絶する。
たまに渋々OKしたと思ったら、行為の前は妙に積極的だったりする。
俺が困惑するのを見て楽しんでいるようにも見える。
結局あいつは主導権を握らないと気がすまないのか、とも思う。
でも。
いまだあの行為は、ナブカにとっては他者から一方的に与えられるものでしかないようだった。
初めが初めなのだから仕方がないが、自分とのときも人形のようにしている彼を見ると少し苛々する。
行為の最中はいつも出来る限り消極的に、そして達するときや息を漏らすときでさえ出来る限り密かに。
そんな習性がすっかり身に付いてしまっている。
その様子は、決して行為自体を楽しんでいるようには見えなかった。
ナブカが何を考えているのか。
したいのか嫌なのかどうでもいいのか。
自分を好きなのか嫌いなのかどうでもいいのか。
そんなことが分からない。分からないから気になる。
どうせあの行為なんて、男と女の関係であったって一方的なものだと思う。
「抱く」方と「抱かれる」方がいるなら、行為は抱く方の意志によって成り立っている。
でもナブカとの関係は、それでは何か満足できない。
馬鹿馬鹿しいことかもしれないが、時に抱き合いたいと思うのだ。
具体的にどういう事なのかは分からない。(自分がナブカに抱かれるなんてのは絶対ごめんだ。)
でも一方通行なこの状態は物足りない。
だから
結局タブールはむしゃくしゃしていた。
ぐぐぐっとすごい力で顎を押し返され、タブールは苦々しげにうめいた。
「いい加減にしろ。ここをどこだと思ってる」
タブールをすっかり押しのけたナブカは涼しげな口調。
自分の顎に手を当て、タブールはちっと小さく舌打ちをした。
吹き抜けの渡り廊下の手前。昼なお薄暗い通路。
二人は武器点検の終了報告に行くところだった。
通路の途中、はじめはちょっとした悪戯心で口づけを迫った。
だが対する相手はけんもほろろもいいところで、その様子にタブールのいつもの意地が顔を出した。
いつの間にか格闘のように押したり押し返されたり、通路の真ん中で間抜けなことをする羽目になった。
「なんだよっ!いいじゃねぇか誰もいないんだから!」
拒まれた悔しさからタブールはわめく。
ナブカは静かにしろ、とため息を漏らす。
「昼は常に任務中だ。仕事とプライベートを混同するな」
ぴしゃりとナブカは言って捨てる。
そのプライベートの時間ですらほとんど確保してもらえないタブールは、納得などできっこなかった。
決して公言しては回れないような関係を持つ二人だったから、細心の注意を払って秘めておくべきだというのもわかっている。
でもナブカは自分を四六時中冷たく扱いすぎではないだろうか。
頼ることも笑いかけることもない。
用事がなければ話しかけもしない。
肉体的接触をしてくることなども、もちろんない。
これでは自分がしびれを切らすのも当然だ、と思う。
特別な関係のはずだったから、余計に我慢がならなかった。
「お前、何考えてんのかわかんねぇよ」
タブールははぁー、とため息をつく。
すでにかなり前方を歩いていたナブカは、つと立ち止まって振り返った。
「なんなんだよ。さわられんのが嫌なら、なんで俺に手ぇ出したんだよ」
変な言い方だとは思う。でもはじめに踏み込んできたのはナブカだ。
ナブカはじっとこちらを見ている。
タブールは負けじとそれを見返した。
期待と不安とが入り交じる。でも果たして自分はどういう答えを望んでいるのだろう。
すると、ナブカがふいと顔を背けた。
「さっさとこいタブール。無駄口を叩くな」
そしてそのまま、すたすたと歩き出してしまった。
一瞬、タブールは呆気にとられた。
しかしすぐに、怒りの表情でナブカを猛然と追いかける。
「おい!人の質問にはちゃんと答えろ!」
ぐいっとナブカの肩をつかんで自分の方を向かせる。
どんな答えだって、無視されるよりはましだ。
するとナブカはその手をうるさそうに払って、思い切りタブールをにらみつけた。
「うるさい!そんなこと、自分で勝手に考えろ!」
体のどこかで、ぶちっという音が聞こえた。
タブールはナブカの左腕をぐいとつかむと、力任せに引きずった。
「!」
油断していたナブカは平衡を崩し、そのままタブールに引きずられる。
タブールは少し先の昇り階段の裏手に、ナブカの体を突き飛ばした。
倒れ込むナブカの上にそのままのしかかる。
「なっ!おい、やめろ馬鹿!」
遅れてナブカは抵抗を始めるが、そんなものタブールの耳には届かない。
暴れる肩を押さえつけ、上衣をたくし上げようとナブカの上着の裾に手をかける。
「っ・・・!」
ドカバキっ!ゴスっ!
いくつかの鈍い音の後、形勢は完全に逆転していた。
「・・・・・・・・・・う」
我に返ると、タブールは床に頬ずりをしていた。
もろに掌底を食らったせいで、目の前に星がちかちかする。何故か後頭部も痛い。
「もうお前みたいな馬鹿はしらん!俺一人で行くからとっとと帰れ!!」
少しだけ乱れた上着を直し、ナブカはそう怒鳴ってから肩を怒らせて暗い通路に消えた。
「おいっ!お前も悪ぃんだぞっ!!」
身を起こしてようやくそれだけ言ったが、その声がナブカに届いたかどうかはついに分からなかった。
読み物第二弾ですが、書き始めて早くも駄作の予感。まとまらなさそう・・・(汗)。
なんだか二人ともキャラ違うしね!これぞ創作の醍醐味・・・なのか?
とりあえずタブールはヘタレ。これ鉄則。
今回ずっとモーニング娘。のアルバム聞きながら書いてたんで、ちょっとウエディングテイストというかドリー夢入ってます(笑)。
実はもう85%出来てるんですよ。ちょうど中間の部分がまとまってないのです。死。